教育訓練給付制度は、資格スクールや通信講座の費用の一部が後から戻ってくる、厚生労働省の支援制度です。条件を満たせば、受講費用の20〜70%が給付されます。
「手続きが難しそう」「自分が使えるのか分からない」という理由で、使わないまま資格を取ってしまう人は少なくありません。給付相談の現場でも、制度の存在は知っていても申請まで踏み込めないケースが目立ちます。
そこで本記事では、3種類の給付の違い・対象になる人の条件・申請手順を、はじめての人でも迷わない順番で整理します。同じ資格を取るなら、給付を使うかどうかで実質負担が大きく変わります。
この記事でわかること
- 教育訓練給付制度は3種類(一般20%・特定一般40%・専門実践50〜70%)あり、給付率と上限額が異なる
- 使える条件は雇用保険の加入期間(初回は1年・2回目以降は3年)で決まる
- 申請は受講開始前のハローワーク手続きが起点(事後申請では給付されない)
- 対象講座は「教育訓練講座検索システム」で講座コードまで確認してから申し込む
- 修了後の申請期限は1ヶ月以内。忘れると給付が受けられない
公的情報源: 厚生労働省「教育訓練給付制度」(参照)
結論を先に書きます
教育訓練給付制度は、雇用保険の被保険者(または過去に被保険者だった人)が指定講座を受講したとき、費用の一部が戻る制度です。給付の種類は3つあり、一般は20%、特定一般は40%、専門実践は50〜70%と給付率が段階的に上がります。
つまずきやすいポイントは2つだけ。①受講を始める前にハローワークで手続きすること、②「教育訓練講座検索システム」で対象講座か(講座コードまで)確認することです。この2点さえ外さなければ、申請で大きく困ることはありません。
- 給付は3種類。給付率は一般20%・特定一般40%・専門実践50〜70%
- 条件は雇用保険の加入期間。初回は1年以上、2回目以降は前回給付後に3年以上
- 申請の起点は受講前のハローワーク手続き。事後申請はできない
- 同じ資格でも講座によって対象か変わるため、講座コードでの確認が必須
教育訓練給付制度とは
教育訓練給付制度は、働く人のスキルアップを国が後押しするための、厚生労働省が運営する制度です。雇用保険の被保険者(または被保険者だった人)が指定講座を受講・修了すると、費用の一部が給付されます。
仕組みはシンプルです。雇用保険の保険料を一定期間払ってきた実績をもとに、「学び直しの費用補助」を受けられる、と考えると分かりやすいはずです。
3種類の給付(給付率・上限・対象)
給付は対象講座のレベルによって3種類に分かれ、それぞれ給付率と上限額が異なります。専門性が高い資格ほど、給付率も上限も大きくなる設計です。
| 種類 | 給付率 | 上限 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 受講費用の20% | 最大10万円 | 簿記・ITパスポート・TOEIC等 |
| 特定一般教育訓練 | 受講費用の40% | 最大20万円 | 介護職員初任者研修・第一種衛生管理者等 |
| 専門実践教育訓練 | 受講費用の50%(条件次第で70%) | 最大56万円/年(最大3年) | 社会保険労務士・看護師・大学院等 |
専門実践教育訓練には追加給付があります。修了後1年以内に就職・転職して資格等関連職種に就いた場合、さらに20%が上乗せされ、最大で費用の70%が戻ります。長期・高額な講座ほど、給付を使う効果は大きくなります。
対象となる主な資格・講座
どんな資格が対象になるかは、給付の種類ごとに傾向があります。自分が狙う資格がどの区分かを先に把握しておくと、給付率と実質負担の見当がつきます。
一般教育訓練(給付率20%・上限10万円)
比較的取得しやすい資格・検定が中心です。短期〜中期で取れる定番資格が多く並びます。
- 英語検定・TOEIC・TOEFL等の語学系
- 簿記検定(日本商工会議所)
- ITパスポート・基本情報技術者等のIT系
- FP技能検定2級・3級
- 宅地建物取引士
特定一般教育訓練(給付率40%・上限20万円)
就職・転職に直結しやすい実務系の資格が対象です。一般より給付率が高く、費用負担を抑えやすい区分になります。
- 介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修
- 第一種衛生管理者
- 調理師・製菓衛生師
専門実践教育訓練(給付率50〜70%・上限56万円/年)
国家資格・専門職など、費用も期間も大きい講座が中心です。給付率が最も高く、追加給付まで含めると負担が大きく下がります。
- 社会保険労務士
- 行政書士
- 税理士
- 看護師・介護福祉士・美容師等の国家資格
- 大学院・専門職大学院の一部課程
具体的な対象講座は、厚生労働省の教育訓練給付制度にある「教育訓練講座検索システム」で確認できます。同じ資格名でも講座ごとに対象かどうかが変わるため、検索システムでの確認は欠かせません。検索のやり方は教育訓練給付金 検索システムの使い方で詳しく解説しています。
申請資格:対象になる人
給付を使えるかどうかは、雇用保険の加入期間で決まります。ここを満たしているかが、申請できるかどうかの分かれ目です。
雇用保険の加入期間が条件
教育訓練給付制度を使うには、雇用保険(失業保険)の被保険者であること、または過去に被保険者だったことが必要です。状況別の条件は次の通りです。
| 状況 | 条件 |
|---|---|
| 初めて利用する場合 | 受講開始日時点で雇用保険加入期間が1年以上 |
| 2回目以降の場合 | 前回の給付申請後に3年以上の雇用保険加入期間がある |
| 離職した場合 | 離職日から1年以内(延長の場合は最長4年)かつ1年以上の加入期間 |
初回利用のハードルは加入1年以上と、決して高くありません。会社員として1年以上働いていれば、多くの人が初回の条件を満たします。
対象外になるケース
一方で、次のようなケースは対象外です。雇用保険に加入していない働き方や、離職から時間が経ったケースが中心になります。
- 自営業者・フリーランス(雇用保険に加入していない)
- 学生(雇用保険の被保険者でない場合)
- 受講開始日が離職から1年以上経過している場合
雇用保険の加入状況が分からない場合は、ハローワークで確認できます。給付の可否はここで確定するため、不安なときは受講を決める前に問い合わせておくと安心です。
申請手順(受講前の手続きが起点)
申請でいちばん重要なのは、手続きの起点が「受講前」にあるという点です。受講を終えてから「給付を使いたい」と思っても、原則として後追いでは認められません。
ここからは、ハローワークでの事前確認から給付金の振込まで、5つのステップで整理します。
- ハローワークで事前確認(受講開始14日前まで)
- 対象講座を選んで申込み
- 受講・修了
- 受講修了後に申請(1ヶ月以内)
- 給付金の振込
ステップ1:ハローワークで事前確認(受講開始14日前まで)
一般・特定一般の場合は、受講開始14日前までにハローワークで「教育訓練給付金受給資格者証」の発行を受けます。これが申請の第一歩です。
専門実践教育訓練は、受講開始1ヶ月前までに「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があります。期限が一般・特定一般より早いため、専門実践を狙う人は特に注意してください。
事前確認に持参するものは次の通りです。
- 雇用保険被保険者証
- 本人確認書類(マイナンバーカード等)
- 受講予定講座の資料(パンフレット等)
ステップ2:対象講座を選んで申込み
厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で対象講座を検索し、申し込みます。講座選びの段階で対象か確認しておくことが、後のトラブルを防ぐ鍵になります。
注意したいのは、同じ資格でも講座によって給付対象かどうかが異なる点です。「宅建 通信講座」と検索しても、すべての通信講座が対象とは限りません。検索システムで具体的な講座名・講座コードを確認してから申し込んでください。通信講座とスクールのどちらを選ぶか迷う場合は、通信講座と資格スクールの違いも参考になります。
ステップ3:受講・修了
指定された講座を受講し、修了します。ここで見落としやすいのが、修了の条件が講座ごとに違うことです。
修了条件は「出席率80%以上」「修了試験合格」などさまざまです。条件を満たさないと給付は受けられないため、受講を始める前に「何をもって修了とするか」を必ず確認しておきましょう。
ステップ4:受講修了後に申請(1ヶ月以内)
講座修了日の翌日から1ヶ月以内に、ハローワークへ申請します。この期限は短いため、修了したらすぐ動くのが安全です。
申請に持参するものは次の通りです。
- 教育訓練修了証明書
- 領収書(原本)
- 教育訓練給付金受給資格者証
- 本人名義の預金口座情報
ステップ5:給付金の振込
申請後、1〜2ヶ月程度で指定口座に給付金が振り込まれます。ここまで来れば手続きは完了です。振込額は、給付率(一般20%・特定一般40%・専門実践50〜70%)と上限に応じた金額になります。
よくある質問
教育訓練給付制度について、相談の現場でよく出る質問を整理します。
Q1:パートタイム・アルバイトでも対象になりますか?
雇用保険に加入していれば対象になります。パートでも週20時間以上勤務・31日以上の雇用見込みがある場合は、雇用保険への加入義務があります。自分が加入しているか分からないときは、勤務先または年金事務所で確認できます。
Q2:受講中に転職・退職しても給付されますか?
一般・特定一般の場合は、受講修了後の申請時点で要件を満たしていれば給付されます。退職したケースでは、離職日から1年以内かつ1年以上の加入期間があることを確認してください。条件を満たせば、在職中に受講を始めても問題ありません。
Q3:通信講座も対象になりますか?
なります。通学か通信かは問われません。ただし、すべての通信講座が対象というわけではない点に注意が必要です。「教育訓練講座検索システム」で講座コードを確認してから申し込むことが重要になります。
Q4:申請を忘れると給付を受けられませんか?
受けられません。修了日の翌日から1ヶ月以内が申請期限で、期限を過ぎると給付されない仕組みです。修了したら書類を揃えてすぐに申請するのが、確実な進め方になります。
まとめ
教育訓練給付制度は、条件を満たせば資格取得の実質費用を大きく下げられる制度です。最後に要点を整理します。
- 給付は3種類。給付率は一般20%・特定一般40%・専門実践50〜70%で、上限額も段階的に上がる
- 条件は雇用保険の加入期間。初回は1年以上を満たせば多くの会社員が対象
- 受講前にハローワークで事前手続きが必要。事後申請では給付されない
- 対象講座は「教育訓練講座検索システム」で講座コードまで確認してから申し込む
- 修了後の申請期限は1ヶ月以内。忘れると給付が受けられない
資格取得を検討しているなら、まず「その講座が教育訓練給付制度の対象か」を確認するところから始めるのがおすすめです。同じ資格を取るなら、給付を活用したほうが実質負担は大幅に下がります。
給付の対象になりやすい資格を選びたい人は、転職に有利な資格おすすめも合わせて確認してみてください。
免責事項
※本記事は制度の概要を整理したものです。最新情報・個別の適用可否は最寄りのハローワーク(公共職業安定所)でご確認ください。制度内容は変更される場合があります。